ニールセンの
プログラムノートと
つの気質』


第一楽章

 第一楽章は、胆汁質を表現しています。ニールセンが見た絵で描かれていた男は、馬にまたがり、手には長い剣を持ち、虚空を荒々しく切り裂いていました。彼の目は顔から飛び出そうなほど大きく見開かれ、その形相は怒りと憎しみに満ちていました。この楽章の冒頭では、管楽器とヴァイオリンのたたきつけるような和音と低音楽器の力強い旋律が交錯し、主人公の怒り狂った様子が伝わってきます。提示部を過ぎて曲調が少し落ち着いてくると、クラリネットを始めとする木管楽器が、ppのespressivoで穏やかな旋律を奏でます。しかしそれも長くは続かず、主題とともに高揚し、ファンファーレにつながります。続いてオーボエが第二主題をpで表情豊かにうたいますが、やはりすぐにリズミカルな動きによってさえぎられ、ffに通じていきます。このように、落ち着いた曲調が長く続かずに変化する様子は、まさに短気で気分が変わりやすい胆汁質の性質を表現しています。そして一層力強く第二主題が奏でられた後は、展開部に入ります。ここでは、自制心を失ったように荒々しい部分と、自らの短気を後悔するように穏やかな部分が共存している、とニールセンは述べています。ffの力強いモチーフが前者を、それとは対照的に悲しげにうたわれるモチーフが後者を表現しています(譜例1)。そして緊張感を伴いながら曲は展開していき、最高潮に達します。やがてその興奮も落ち着きを取り戻し、オーボエによる第二主題が穏やかにうたわれますが、再現部に入ると怒りに満ちた旋律が再び現れます。それが再び静まったかと思うと、まるで抑えきれなかった感情が溢れるかのように、突然不協和音のクレッシェンドが鳴り響きます。さらに昂った怒りを伴ってコーダに入り、最後まで静まることなく終わります。

譜例1

譜例1


第二楽章

 第二楽章は粘液質がモチーフになっています。ニールセンがイメージしたのは、非常に愛らしく、誰からも慕われる少年でした。彼は自信を持っていて幸福感に満ちていました。ただ、授業についていけなかったので、教師たちは彼に望みを失っていましたが、叱られることはありませんでした。少年は牧歌的な性質だったので、敵意がそがれてしまったのです。彼の穏やかな性格は、この楽章のゆったりとしたワルツのリズムに表れています。積極的ではない彼は、踊りだすことはなく、そのリズムに身を任せるだけでした。ニールセンは、「エネルギーや感激性などからできるだけ離れて、1つの雰囲気に執着しようと心がけた」と述べています。それが、終始淡々とした曲調につながっているのでしょう。しかし、一箇所だけ雰囲気が変わるところがあります。少年が港の桟橋で大好きな昼寝をしていたとき、船から樽が転げ落ちて、少年の眠りを妨げたのです(譜例2)。しかし、彼にとってはそんなことはどうでもいいことで、すぐに静寂を取り戻し、再びまどろみます。続いて現れる主題と暖かい響きの和音からは、ぽかぽかとした太陽の下で幸せそうに眠る少年の様子が連想されます。そして最後まで穏やかな曲調のまま、終わりを迎えます。

譜例2

譜例2



用語解説

プログラム・ノート

交響曲第2番についてニールセン自身が記した解説。晩年に内容が拡大された。

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標題音楽

音楽外の想念や心象風景を聴き手に喚起させることを意図して、情景やイメージ、気分や雰囲気などを描写した音楽。

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