「ローマの噴水」の特殊楽器


チェレスタ

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 チェレスタはおよそ100年前に作られた、比較的新しい楽器です。イタリア語で「天国的な」という意味をもつこの楽器は、繊細で可憐な優しい音色が特徴的です。
 見た目は鍵盤がありピアノのようですが、実はグロッケンシュピールにごく近い鉄琴の一種です。音の出し方はピアノと同じ鍵盤を用い、その鍵盤を通してハンマーで鉄板を打って音を出します。ハンマーは上下が薄く左右は太くて、しなるようになっています。鍵盤打楽器(シロフォンやビブラフォンなど)で用いられるバチの柄が柔らかいことと同じです。
 チェレスタが世間に知られるきっかけとなった曲が、チャイコフスキー作曲「くるみ割り人形」の中の一曲「こんぺいとうの踊り」であることは有名な話です。当時チャイコフスキーは「こんぺいとうの踊り」でメロディーを奏でる楽器を決めかねていました。そんな中、チェレスタに出会った彼はすぐさまその楽器をチェレスタに決めてしまった、という逸話が残るほどチャイコフスキーはチェレスタに惚れ込んでいたようです。
 「ローマの噴水」では全曲にわたって登場します。特に第三部「トレヴィの噴水」から第四部「メディチ荘の噴水」に移り変わる際の繊細できらびやかな旋律は、夕暮れの物悲しい気持ちの始まりを告げる重要な旋律といえます。

ハープ

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 ハープの起源は紀元前3000年頃のエジプト・メソポタミア文明から始まるといわれています。世界中でハープの原形と思われる原始的な楽器も発見されています。
 1810年、フランスのエラールが現在のペダル・ハープの原形となるダブルアクション・ハープを発表しました。現在のハープの弦は計47本で、1オクターヴごとに7本ずつ張られており、ペダルは7本ついています。このペダルによって半音の差を作り出すことができるため、あらゆる長・短調の音階あるいは和音の演奏や、ハープ独特のグリッサンドが可能となりました。こうして演奏の幅が大きくひろがったハープは、オーケストラで使用されることの多い必要不可欠な楽器となりました。
 「ローマの噴水」では全曲にわたって登場し、ハープは二台用いられます。ハープが二台あることでオーケストラ全体の華やかさをより引き立てることができ、また一つのメロディーの中でハープ同士が掛け合いをするところもあります。ハープが二台あることで可能となるアンサンブルから生まれる華やかな音色に是非注目してみてください。

ピアノ

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 弦楽器を鍵盤楽器として演奏しようという考案は14世紀ごろから行われており、次第に改良されて15世紀ごろにはピアノの前身である「チェンバロ」ができました。
 「チェンバロ」の見た目はピアノに似ていますが、ピアノは弦を「打って」音を出すのに対して、チェンバロは弦を「はじいて」音を出します。18世紀以前における基本的な鍵盤楽器として長期にわたって広く使用されました。
 一方、ハンマーで弦を「打つ」ことで音を出す鍵盤楽器についても徐々に開発が行われていました。チェンバロを作成したイタリアのクリストフォリがハンマーによる打弦機構を発明しました。そして18世紀末から次第にピアノの優秀性が認識されはじめ、ついにはチェンバロに取って代わりました。「ピアノ」という通称は「ピアノフォルテ」の略であり、その名の通りタッチによる音の強弱表現が可能なことが、チェンバロとの大きな違いです。
 ピアノはしばしば「一人オーケストラ」と称されます。伴奏もメロディーもピアノ一台だけで演奏することができるからです。またピアノ協奏曲も数多く発表されています。このように主役を引き受けることが多いピアノですが、「ローマの噴水」ではすべての楽器と同じ立ち位置でオーケストラに混ざります。弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器が集まるオーケストラに、弦楽器要素も打楽器要素も含んだ「弦打楽器」であるピアノが入ります。それによって、独奏やピアノ協奏曲とは異なる、様々な楽器と融合したことで生まれる新しいピアノの魅力が味わえるのではないでしょうか。
 「ローマの噴水」では全曲にわたって登場します。特に第三部「トレヴィの噴水」に入ってすぐの連符は、弦や木管と共に波を表すような音形を奏でます。この連符により壮大な第三部をより華々しく、堂々としたものにしています。

オルガン

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 現在ではオルガンというと「リードオルガン」や「電子オルガン」などもありますが、ここでは「ローマの噴水」の曲中で用いられる「パイプオルガン」をご紹介します。
 オルガンは基本的には大量生産ができない楽器です。まず注文があって、製作者の綿密な協議のもとに、そのオルガンの規模、性能、特色、設備するホール、その他の諸条件を考慮して設計されます。パイプ一本をはじめとして、あらゆる装置がそのオルガンのためだけに製作されます。何年もの大作業が続いて、ようやくオルガンは完成するのです。
 では一台のパイプオルガンには何本のパイプが使用されているのでしょうか。ホールによって異なりはしますが、基本的に表に見えている数は全体の数のほんの一部にすぎません。今回の定期演奏会で会場となるザ・シンフォニーホールでは3732本、京都コンサートホールでは7155本ものパイプが使用されています。この一つ一つのパイプも、使用されるホールのためだけに選ばれ、作られた特別なパイプなのです。
 また、パイプオルガンは一台の楽器でありながら弦楽器、トランペット、フルート、はては尺八にいたるまで様々な音色を持っています。その音色の選択は演奏台にある「ストップ」という数十本のレバーを操作して行います。奏者はこのストップの数々を組み合わせて独自の音色を作り出し、曲想に変化を与えるのです。
 「ローマの噴水」では第三部「トレヴィの噴水」で登場します。使用は任意となっていますが、パイプオルガンが入ることでオーケストラ全体の厚みが増し、華やかで壮大な第三部をパイプオルガンの荘厳な音色が盛り上げてくれます。

チェレスタ、ハープ、ピアノ、オルガン。様々な特色を持った四つの楽器が、オーケストラに入り一緒に演奏することで、「ローマの噴水」の「水」をテーマにした情景はより鮮明に、きらびやかに、壮大に映し出されます。オーケストラと四つの特殊楽器が生み出す「ローマの噴水」の情景を、ぜひ耳と目で感じてみてください。

文:194期HP広報部