客演指揮者齊藤先生
インタビュー


京大オケの第一印象

――今回が京大オケとの初共演ですが、京大オケの第一印象はどのようなものでしたか。 

 ちょっとおとなしいというか、まじめな感じがしたかな。学生オーケストラを年に一回は振るんだけど、私大の学生とはずいぶん雰囲気が違うね。17,8年前か、京大オケで佐渡(裕)さんが(第156回定期演奏会で)マーラーの9番を振った時に、アシスタントをやっていたんですよ。年末の恒例行事かなにかで京大オケが年末にブラームス(の交響曲)を全曲やっていて、佐渡さんや学生指揮者たちと順番に指揮して、終わったら学生とも遊んでいたんですが、そのときとはずいぶん雰囲気が違うなと。まだ二回しか練習してないから分からないですけどね(笑)

シベリウスの交響曲第2番について

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――今回の演奏会でメインとして演奏する、シベリウスの交響曲第2番のイメージをお聞かせください。

 シベリウスは36歳の時にこの曲を書いたけど若い時代のハツラツとした、開放感のある曲ですね。北欧の自然とシベリウスの躁状態の心象風景が融合している。まあそういう意味では皆さんに凄く合っていると思いますし、青春をかけるに値するシンフォニーだと思いますよ。

――練習している時に意識していることはありますか。

 流れが大事だから自然に聴こえるということ。楽章ごとのキャラクターを生かすということ。

――楽章ごとのキャラクターの違いとは、具体的にどのようなものでしょうか。

 1楽章は自然そのもの。劇的な展開部を経て絵画のように音楽を作っていくのが一つの特徴。2楽章は宗教的なものが入っている。1楽章とは違ってより自由な形式。この楽章だけを抜いても一種の交響詩と言えるかもしれません。僕は「交響詩」のつもりでやっています。神話のような物語性と瞑想的な金管のコラール。音色の変化を大事にして作っていきたい。あなたたちならできるでしょう。
 3楽章は技術的にとても難しい。これは練習するしかありません。超絶技巧的なところもあるし、ユニゾンを速いテンポで正確にやらないといけない。弦楽器は特に難しい。4楽章はベートーヴェンの第5シンフォニーの最終楽章のようなところがありますよね。苦悩から歓喜へ至るみたいな。シベリウスは若いときにいろんな作曲家のシンフォニーを聴き比べていて、20代の頃はブルックナーに傾倒していました。ブルックナーはオルガン弾きだから教会で神に捧げる音楽を書いてきたわけだけど、シベリウスの音楽にも構造上似たような美意識がある。確か25、6歳の頃にブルックナーの3番のシンフォニーに憧れていて、ああいう響きの開放感をモデルにしていた。それが1,2,3楽章のドラマを経て4楽章に反映されていると思います。清々とした若い音楽ですね。

――そういう意味でも僕たち学生オーケストラにぴったりということですね。

 そうですね。4楽章は弾いていて気持ちいでしょ、気持ちが昂るでしょ。あれで昂らない訳がないです(笑)

そのほかの演奏曲目について

――ピアノ協奏曲第3番についてお聞かせください。

 ラフマニノフ3番はすごく難しい曲です。ピアノも難しいし、オケも難しい。指揮者も合わせることが結構難しい。
ラフマニノフは、ご存知の通り手がものすごく大きい人でね。この曲は技術的にもちろん難しいんだけれど、2楽章には10度の左手が出てくるんですよ。9度は頻繁に出てくる。10度って言ったらオクターブ+3度だからね。ピアノの鍵盤で言うとレの音からファ♯まで。親指と小指を伸ばすだけじゃなくて、その間に音がある。僕も結構手が大きいほうだけどレからファ♯は結構きついです。
ピアニストは音楽的にはもちろん、体力的な強靭さが求められる。カロリーの消費量が多いタフな作品です。

――ピアノとオーケストラの関係性はどのようなものでしょうか。

 ピアニストに対してのオーケストラが、「伴奏」という範疇を超えている。完全にオーケストラとピアノが対等に関係を持って、極めて有機的に展開していく。カデンツァなんかは、フルートからオーボエ、クラリネット、ホルンと繋がるじゃないですか。ああいうのはなかなかないよね。質が高く考え抜かれている。冒頭の第一主題、ピアノソロから始まってビオラに受け継がれるところなんかもラフマニノフならではのセンスがある。
3番はラフマニノフがニューヨークで弾くために書いたのですが、当時ニューヨーク・フィルの客演指揮者だったグスタフ・マーラーがものすごい量の練習をしたと言うから、相当難しかったんでしょうね。
僕はこの曲を初めてプロのオーケストラで演奏した時にとても苦労したことを覚えています。ソリストがかなりテンポを揺らす人だったので、数時間のリハーサルで合わせるのが大変でした。でも、ラフマニノフの生演奏の音源を聴くと意外とあっさり、楽譜に書いたテンポ通り弾いています。

――ロザムンデ序曲についてお聞かせ下さい。

 シューベルトはモーツァルトと同じく短い生涯にたくさんの曲を、しかも多岐の分野にわたって書いています。ベートーヴェンのように徹頭徹尾推敲型の作曲者ではなくて、ウイーン人特有のオーストリア的な即興さで流れるように書いたから、メロディーが素晴らしく綺麗。しかし、非常に正統的で骨太な作品。シンフォニック的な構造感とシューベルト特有の遊び心を(演奏に)入れられたらいいと思います。

最後に

――最後に、今回の演奏会への意気込みをお聞かせください。

 皆さんには燃え尽きてほしい。どの曲もどの箇所も手を抜けないプログラムだと思います。僕も燃えますのでヨロシク!


 直接お話をお聞きして、先生の音楽に対する情熱がとても感じられました。本番まであと少しですが、先生と一緒に完全燃焼できる演奏会を作り上げたいと思います。
 お忙しいなかインタビューを引き受けてくださり、ありがとうございました。

文:195期HP広報部