京大オケのいまむかし


○寺本義明さんプロフィール
 京都府出身。京都大学文学部卒業。名古屋フィルハーモニー交響楽団を経て、2000年より東京都交響楽団首席フルート奏者。愛知県芸術大学、名古屋芸術大学、東京芸大各講師。

京大オケの強み

―――おふたりは大学入学と同時に京大オケに入団され、その後何年かオケで過ごされてきましたが、京大オケの強みとはなんだと思われますか。

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寺本さん在団当時の定期演奏会の様子

寺本:京大オケに入ってから二回生の前半ぐらいまではあんまりこのオケにのめり込めなくて、そんなに熱心な団員じゃありませんでした。でも定期演奏会に出演させてもらううちに、だんだんオケにのめり込んで、積極的になっていったという感じですね。中学から大学までずっとアマチュアオケでやってきて、特に最後の3、4年は首席奏者や学生指揮者をやるなどしてとても濃かったので、その経験っていうのは自分にとって原点になっているかなと思います。
 これは同じ時期にオケにいた人たちに聞けば一人一人違うことを言うかもしれませんが、一個一個知恵を絞って、自分たちでその時いいと思ったことに対して一生懸命頑張るという感じで過ごしていた気がします。とにかくがむしゃらだったと思います。

倉坂:みんなが一生懸命、必死にがむしゃらに頑張るっていうのは多分今も変わってないような気がします。ひたすら時間をかけて取り組むというか。京大オケには、これまでの先輩方が築いて下さったお客様の評価や指揮者の先生の印象があって、そのおかげでお客様や指揮者の先生が京大オケに少し特別な思いを持って下さっているんだ、と思います。
 コンサートホールでお客様がたくさん入った中で、その曲を演奏させていただける立場を与えられているのだから、自分ができることを模索してやっていくしかないのかなと、私が見てきたこれまでを思い返してみるとそう感じます。

寺本:時間をかけるっていうのもそうなんだけど、それに加えて京大オケの根幹を支えているのは、できるだけプロに頼らない、外部の人に頼らない、というところじゃないかな。僕らの頃は、客演指揮者がtuttiを振りに来るだけで、個人レッスンに行く以外は完全に学生でやっていました。
 今の自分は、そんな時間の掛け方はしないけど、京大オケがそうやってやるのはすごく大事なことだと思います。自分がプロになっていうのは変だけど、できるだけプロの手は借りない方がいいと思います。プロを入れることのメリットは非常に大きいんだけど、それをある程度封印してこのオケはやってきたし、それが色んな伝統にも繋がってきていると思います。これは遠回りっていうか、効率が悪いっていうか、学生がやるとリーダーが音楽的に的外れなことを言うかも知れない、プロがみたら『何言ってるんだ』っていうこともあるかもしれないですよね。でも僕はそれでいいと思っています。

―――「時間をかける・プロの手を出来るだけ借りない」という京大オケの手法を、プロのフルート奏者となった今、どのように評価されていますか。

寺本:学生オケを指導したり、指揮したりすることもあるんだけど、そこで学生たちに期待したいのは「自分たちの力でやる」っていうことです。つまり、リーダーも学生がやる。学生がやるっていうことは、いっぱい間違うかもしれない。だから自分がプロになって思うのは、よく京大オケはそういう非能率的な部分を含むやり方でこのクオリティを保ってきたなということ。もしかしたら京大だから出来たのかもしれない。
 ただ、このやり方の一番の難しさは、リーダーに左右されるということ。誰かが必ずリーダーをやらなければならないから、みんなで力を合わせて乗り切らないといけないような時もあるかもしれない。そのかわり、難しい状況で学生がまとまった時には、専門家が要領よく整えてくれたものとは全然違うものができるのではないかなと思う。だから難しいけど可能性のあるやり方だと思うし、続けられるのもなら続けてほしいと思います。

倉坂:これはあくまで個人の意見なんですけど、いい演奏をするためには手段を選ぶべきではないかなーと思うときもあって。最終的にいい演奏をするためには、自分たちでは気づかない所をプロの視点から気付かせてもらうことが必要になる気がします。そこを考えると、学生だけでやるってこと自体にこだわることはないのかなって思うこともあります。

寺本:僕、倉坂さんの言っていることはよく分かります。だけど、じゃあいい演奏って何かってことを考えたときにね、それは、結構いろんな側面があると思うんです。あたかも『この演奏会ではこのレベルを目指さなきゃいけない』っていう線があって、それを超えないといけない、みたいなイメージを持ちやすいけど、もともとそんな線なんてものはないわけだよね。
 あとは、例えば京大オケの伝統だとかいうようなことを言ったとしても、そういうものもあるようなないような、よくわからないことだよね。だから、今の学生は、決して10年前の先輩のために演奏しているわけではないわけだし、10年後の京大オケのためにやる必要もないと思うんです。だから、今までこうだったから変えちゃいけない、百何十回続いてきたものを続けなきゃいけないみたいに思う必要は全然ないと思うなあ。たまたま、今集まった人たちが、今の京大オケを作っているだけだから。

用語解説

tutti

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