ワルツの発祥


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 ワルツの起源を追うのは簡単なことでは無い。ワルツという言葉は舞曲の一つを示す言葉であり、また同時に舞踊の一形態を示す言葉でもある。むろん、両者は密接に関連しており、音楽としての起源を追うことは即ち舞踊の起源を追うことと無関係では無い。ワルツは広くヨーロッパで愛されたために、諸所雑多な場所が起源を主張しているためであり、また実際ワルツの流れをくむと思われる舞踊がヨーロッパの各地に存在するためでもある。
 ワルツは大きく分けて主にドイツ起源説とフランス起源説の二つが存在する。
 ドイツに起源を求めるものには、南アルプス地方などを中心として流行した「レントラー」に由来するという説がある。モーツァルト作曲のピアノ曲《6つのレントラー》、ベートーヴェン作曲のヴァイオリン曲《6つのレントラー》などが有名である。また、メヌエット(指を触れ合わせて踊る四分の三拍子の舞曲)に似た「ドイツ舞曲」に起源を求める説もある。これらとは別に、13世紀ごろには「ヴェラー(wellar)」というダンスがドイツの農民の間に流行し、これが直接の先祖であるとされることもある。
 一方フランスに起源を求めるものには、12世紀南フランスのプロヴァンス地方で踊られていた「ラ・ヴォルタ」に由来するという説がある。これは16世紀にはパリに伝えられ、宮廷でもてはやされるようになった。そしてこれは18世紀中ごろ「プロヴァンサル」(プロヴァンス風)という名前になってパリで再流行した。このころちょうど貴族階級の間ではアルザス地方から伝えられた上述の「ドイツ舞曲」(フランス名アルマンド)も広まった。アルマンドの名前を持つ曲としては、バッハやヘンデルによるピアノやその他の楽器の組曲の一つとなっているものが知られている。庶民に愛された「ラ・ヴォルタ」は、フランス革命において時代のシンボルとなりおおいに流行した。革命期が過ぎナポレオンの時代になると、ナポレオンの進軍に合わせてワルツは全ヨーロッパへ広がったという。
 これらいくつもの舞踊に共通する特徴として、男女が二人で踊り、その多くが四分の三拍子、または八分の三拍子のリズムを持つという点が挙げられる。このように諸説入り乱れているワルツの起源であるが、確かなことは、18世紀、男女のペアで踊る舞踊が、ドイツやフランスで広まっていたこと、そしてその中でも体を密着させて踊る舞踊が特に人気を博していたという事実である。この踊りが如何に好まれていたかは、フランスではカトリック教会、オーストリアでは為政者が風紀の乱れと結びつけ度々禁令を出したにも関わらず、あまりの人気に結局はその禁令を解かざるを得なかったことからも、明らかなことであろう。

文:196期HP広報部