歌劇『ナブッコ』


ヴェルディ(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi,1813-1901)といえば、『リゴレット(Rigoletto)』や『アイーダ(Aida)』など、数々のオペラを作曲した19世紀を代表するイタリアのロマン派音楽家です。第199回定期演奏会で演奏する歌劇『ナブッコ』序曲も、彼を代表するオペラの一つです。

 『ナブッコ』は、彼が28歳の時に作った3作目のオペラであり、初演当初(1842年、ミラノ・スカラ座)は熱狂的な成功を収めました。

 舞台は紀元前6世紀ごろのエルサレム及びバビロン。旧約聖書に記されたバビロニア王ナブッコ(ネブカドネザル2世)を主人公にした物語です。しかしオペラの内容は、いくつかの史実の劇的な情景に、イタリア人の趣味や慣習、時代背景を考えて改変したフィクションになっています。物語は、ナブッコ率いるバビロニア軍がエルサレムに侵入するところから始まります。ナブッコはこの侵略に成功、エルサレムの民を捕虜にしますが、その後彼の長女は王位簒奪を企て、次女はエルサレムの王族の男性と恋に落ちユダヤ教に改宗してしまいます。ナブッコは王冠を手に、自分はエルサレムの王でもありユダヤの神でもある、と宣言。すると突然雷鳴がとどろき、冒涜されたユダヤの神がナブッコを罰します。長女は父を幽閉し王位を奪い、邪魔な妹を捕虜もろとも処刑しようとします。娘の窮地に何もできないナブッコは、最後の手段としてユダヤの神に祈りをささげ許しを請います。必死の祈りは神に届き、ナブッコは牢獄を脱し臣下と共に処刑場に駆けつけ、偶像を破壊し、娘と捕虜たちを解放。追い詰められた長女は毒を飲んで自殺し、最後は全員が祈り感謝する場面で幕は下ります。

 歌劇『ナブッコ』序曲は、オペラの中で歌われるいくつかの主題や旋律を素材として自由に合成された、いわゆる接続曲ふうの音楽です。

冒頭ではトランペット、トロンボーン、チンバッソによってコラール風の主題が奏されます。アンダンテ・マエストーゾで始まりますが、一瞬の休拍の後、オペラ第2部で歌われる合唱、「呪われたものには兄弟もなく」の「呪い」のモティーフがアレグロのテンポで現れます。その後、再びコラール風の主題が再現されると、今度はアンダンティーノのテンポに移ります。ここでは、第3部で歌われる有名な、「捕らわれたヘブライ人たちの合唱(行け、わが思いよ、金色の翼に乗って)」の主題がオーボエによって歌われます。そして曲はアレグロのテンポに戻り、「呪い」のモティーフが再現されてから、音楽は次第に高潮し、新しい三つの主題が次々に現われクライマックスを形成します。最後のコーダでは急速なテンポで「呪い」のモティーフが二長調で演奏され、この序曲を力強く締めくくります。

ヴェルディ作曲、歌劇『ナブッコ』序曲は、わずか28歳の作ったものとは信じがたいほどの、周到で巧妙な密度の高い表現と、若さから来る情熱と力強さを併せ持った作品です。私たちの演奏をぜひ会場でお聞きください!

 

 

参考文献

ヴェルディ全オペラ解説・1 「オベルト」から「マクベス」まで

(高崎保男著 音楽之友社2011)

新グローヴ オペラ事典

(スタンリー・セイデイ編 中矢一義/日本語版監修 白水社2006)

オックスフォード オペラ大事典

(編著者ジョン、ウォラック、ユアン・ウエスト 監訳者大崎滋生、西原稔 平凡社1996)

 音楽大事典 第一巻

 (岸辺成雄、他編集 平凡社1981)

文:199期HP広報部