客演指揮井上道義先生
インタビュー


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今回、ラ・フォル・ジュルネ金沢2016で指揮を振ってくださる井上道義先生にお話を伺いました。

−−なぜラ・フォル・ジュルネ金沢2016に京大オケを呼んだのでしょうか。

井上先生 毎回アマチュアのオーケストラには来てもらうようにしてるのね。東京のプロフェッショナルのオーケストラを呼ぶことはあまりしたくないって感じで、かといって中心はオーケストラアンサンブル金沢だからお客さんの要望もあって大きなオーケストラが欲しくて。そこで京大だったら来てくれれば御の字って感じで。30年くらい前かな、(京大オケと)最初にやった時は。練習室行くと夜中の2時でもさらってたり狂ったようにずっと音楽ばかりやってる奴がいたりしたのが面白くて。卒業した人もたくさん弾いてたりして年齢層に差があるのもいいなと思ったんです。いつも非常によく考えて練習に来てくれて、パートリーダーや先輩がうまい具合に演奏の質を上げる方法を知っているらしくてそういうのもいいですよね。

 

−−ラ・フォル・ジュルネのテーマである「自然と音楽」についてはどうお考えでしょうか。

井上先生 当たり前の話だけど、音楽は最初は自然の模倣から始まってるんだよね。鳥の声、それから寒いっていう感じを何か別の形で表そうとか、暑いっていう感じをどうやったら絵に描けるかとか。絵に暑い感じを表すのはすごく難しいけど音楽だってそうじゃない。まあそういう試みをみんなしたいらしくて。他のもので一つのことを表そうとするところから、いろんなものが始まるんじゃない?だから人を好きな気持ちとか抱き締めたいとか、そんな気持ちはそのまんま入ってても全然面白くないんだよな。それをどういう風に言うか、どういう場所で言うかとか、いろいろなことを考えながらみんな生きてるんだよな。そういうところから文化というのは始まるんじゃないかな。だからまあ人間てのは自然の中にある。数学だろうが物理だろうがみんな自然と関わっているし。だから、この自然、ナチュールなんてものをフェスティバルの名前にすることはずるいんです。何でもいいってことになっちゃうから。

 

−−ドヴォルザーク交響曲第8番、J.シュトラウス二世ワルツ『ウィーンの森の物語』についてそれぞれの魅力をお聞かせください。

井上先生 『ウィーンの森の物語』はいい曲じゃないですか、これはもう本当に。ワルツの中でも名曲中の名曲だと思うよ、ドナウと同じくらいじゃないかなあ。(今回はチターなしでの演奏なので)チターがあれば一番いいんだけどね。もう一曲のドヴォルザーク交響曲第8番はボヘミアンという言葉が人間の自由な生きかたを表すように、山がどこまでもでこぼこでこぼこ続いてるような感じが曲に表れていて。プラハなんか行っても丘があるし川が流れているしでそういうものがふんだんにあるんじゃないかな。それこそ鳥の声も聞こえてるわけだし今回のテーマにぴったりだと思います。

 

−−今回振っていただいて、京大オケの印象はどうですか?

 井上先生 練習場が立派になって、時代が変わったなあって感じがあって。新しい練習場の良いところは、地下二階だから携帯の電波が入んないからな、みんな携帯見なくて、集中できるよな。携帯が見えちゃうとなんとなくすぐ開けちゃったりするじゃない、それいいよね。

 

―――時代が変わったというのは?

井上先生 昔の京大オケっていうのは、物がないところで学校の、そのいわゆる勉強だけじゃ嫌だっていう人が集まってるなって感じが強かったのだけど、今は京大に入る奴が、そのいわゆる勉強ばっかりのがり勉タイプの人はあんまり見えないなって感じかな。やっぱり東大なんかでも女性がたくさん入ってきているわけだし、昔は男性ばっかりだったからね、京都大学も。俺が学生だったころはそれこそ「あ、女がいる」って珍しかったくらい。時代は変わっていると思うし、豊かになっていると感じています。

 

−−今回の共演にあたって、京大オケと練習した感想と本番への思いをお聞かせください。

井上先生 一時期、京都随分住んでいたんですよ。そのときだったらなんとか練習に来れたんだけど。今はちょっとあっちこっち飛んでまわってて、あと病気のこともあってあんまり来れなくて。まあ練習自体は曲も少ないし、非常に難しいものをやってないし、シンプルな作品ばっかりだったけど、練習時間が少なかった分、いろんなよもやま話とかできなかったのがちょっと残念だったけどね。

 

−−団員に一言お願いします。

井上先生 とても恵まれているっていうことを、今、知っていてほしいなと思っています。みんなそれは努力して学校に来ていると思うし、それぞれの家庭はこどもに授業料払ったりでいろいろ大変かもしれないけど、そうは言いながらやっぱり、学校の中の施設はとてもよくていい先生もいるわけだし、恵まれている。愛情にも時間にも恵まれているだろうし、たくさんある大学生活を謳歌しているなって感じがあって、そこがいいなって思います。だからこそ、みんながみんなそういうことをできるわけではないっていうことを知っていてほしいなと思います。

文:199期HP広報部