コンサートホールとその形態


音楽の歴史を語るうえで、コンサートホールの建築は重要な位置を占めます。

そもそも音楽は、有史以前は宗教的・祝祭的な役割を担ってきました。中世になると、西洋において権力者の示威行為として音楽が用いられるようになります。宮廷音楽家が宮廷で祝祭の音楽を演奏したのがそれに当たります。しかしここでの音楽は、あくまで舞踏や祝宴のための労働行為の一環であり、芸術行為ではありませんでした。ルネサンス期の知識教育を経て、音楽は芸術活動として認められるようになります。17世紀に入ると、上流階級の間で室内楽のサロンや、会費をとる音楽演奏会が行われるようになり、あわせて営利を目的とした演奏のためのホールの建築が始まります。

音楽は18世紀以降、市民階級の人々にも浸透していきます。ブラームスの活躍した19世紀には、コンサートホールの建築が本格化・大規模化していきます。大型ホールでの演奏を想定して、この時代の作曲家たちは演奏規模を大きくします。弦楽器群を増やし、管楽器の種類を増やし、打楽器類にも多様な役割を求めるようになったのです。現在の一般的な楽器編成がこの時代に成立したのは、ホールの大規模化と無関係ではないのです。

ひとくちにコンサートホールといっても、その形状は大きく3つに分けられます。

一つ目はシューボックス型。18世紀頃につくられた初期のコンサートホールから、今日に至るまでの数多くの実施例をもつタイプです。この分類に含まれるホールの多くが、長方形の平面をもち、また天井も基本的に平らに近い形をしていることから、「靴箱」型のホール、つまりシューボックスと呼ばれています。この形式のホールでは、長方形の短辺の一方に舞台が設けられ、その舞台に対してほぼ平行に客席を並べるのが基本型です。(必要に応じてバルコニー席が設けられることもあります)第199回定期演奏会の会場では京都コンサートホール大ホールがこの形状に当たります。

京都コンサートホール大ホール

写真1.京都コンサートホール大ホール

二つ目はアリーナ形式。舞台を取り巻くように客席を配置した形のコンサートホールのことで、ホールの平面は多角形になるのが特徴です。舞台の四周に客席を配置するため、比較的規模が大きく、なおかつ複雑な建築計画が求められるため、施工技術が高められた近年になって登場したものです。また、この形式をぶどう畑が段々に連なる様をイメージした呼称としてヴィニャード(ワインヤード)形式と呼ぶこともありますが、アリーナ形式を総称して呼ぶにはやや無理があり、アリーナ型コンサートホールの1分類と捉えるのが一般的です。第199回定期演奏会の会場ではサントリーホール大ホールがこの形状に当たります。

三つ目は扇型形式です。その名の通り、扇を開いたような状態の平面をもつことから付いた名称です。扇の要に当たる部分に舞台が設けられ、その要を中心に、円弧を描くように客席が配置されます。(メガホン型と呼ばれることも)この形式のものは、先に示したシューボックス形式のように長方形的な平面をもつわけではなく、またアリーナ形式のように舞台を取り囲むように客席が配置されているわけでもない、いわば、両方の中間的な建築条件を備えたコンサートホールと言えます。第199回定期演奏会の会場ではKOBELCO大ホールがこの形状に当たります。

技術の発展によって様々な形の生まれてきたコンサートホールですが、同時に建築初期の形状もなお現役のホールとして活躍しています。それぞれに特徴の違う音響空間を使いこなすことも現代の演奏者には求められているのです。

参考文献

『コンサートホールの科学』(一般社団法人「日本音響学会」編、2012年)

『オーケストラの文明史 ヨーロッパ三千年の夢』(小宮正安著、春秋社、2011年)

HP「一般財団法人 地域創造(閲覧日2016.05.04)」

http://www.jafra.or.jp/j/library/letter/046/index.php#041

画像

写真.1

京都コンサートホール公式ホームページ(閲覧日2016.05.14)

http://www.kyotoconcerthall.org/

文:199期HP広報部