客演指揮者円光寺先生インタビュー


―――それぞれの曲をどんなふうに、どんな点にこだわって練習だったり本番に向けてやっ

ていこうと思われますか。

メインのブラームスは自分でもすごく大好きな曲で、指揮者になったからにはベートーヴェン、ブラームスをちゃんと振れる指揮者になりたい、というのが若い頃からの目標でした。やっぱり20年間ブラームスが“第9みたいな素晴らしいシンフォニーがもう世の中にあるのに、これ以上どうやってシンフォニーを書くんだ”と悩んだ後に生まれた、素晴らしい名曲ですので、是非集中して聴いていただけたらありがたいです。

なんといっても一番難しいのはブラームスだと思います。これはやっぱり平坦な人生を送って毎日娯楽に勤しんでいた人には書けない音楽だと思います。皆さんにはブラームスの真髄に迫る演奏をして欲しい。ただ音符を並べてもブラームスの音楽にはならないので、色んな秘術を尽くさなければならないですし、それをこれからの練習で伝えていきたいと思います。そして、それに応えてもらえれば嬉しいです。ブラームスの第1番のシンフォニーは何回か聴けば聴くほど良さが分かってくるので、それをお客さんに感じてもらえるような演奏をしたいですね。

眠りの森の美女についてですが、チャイコフスキーといえばバレエ音楽だと思います。もちろん彼の曲には素晴らしい協奏曲もシンフォニーもあるのですが、なんといってもバレエ音楽です。実際バレエと一緒にやるとなると大変なのですが、音楽だけ取ってみると、眠りの森の美女、白鳥の湖、くるみ割り人形、どれも素晴らしいと思いますね。

 

―――音楽だけを取り出して演奏する時の難しさっていうのはどういう所にあると思いますか。

難しくはないと思います。良く曲が書けているのでちゃんと譜面通りに演奏すればすごくいい、絶大な効果が得られると思います。譜面通りに演奏するのが不可能かというとそんなことはなくて、もう皆さん良く出来ているので、これにさらに磨きをかければいい演奏になると思います。

 

―――ではヴェルディのナブッコ序曲についてお願いします。

オペラの序曲は華やかなので、1曲目のナブッコ序曲は幕開けにはとても相応しいのではないかと思います。やっぱりオペラ好きの人は、ヴェルディ、プッチーニ、ビゼーから入って行く人が多いと思いますが、ヴェルディの数ある序曲の中であまり取り上げられる方ではないので、そこにいかに挑戦出来るかが少し課題だとは思います。真ん中で出てくるメロディーが、有名な合唱曲の素敵な曲なので、その曲が目に浮かぶように演奏出来たらいいなと思います。

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―――今まで客演して頂いた時と今回とを比べて変わった所、変わっていない所をお聞かせ下さい。

年々皆の技術は向上していきますが、いわゆる泥臭い熱意、みたいなのは減っていくような気がしています。どちらが良いかは分からないですが、昔は下手くそだった割には熱く語っていたと思います。それでも100年の歴史があるということはすごいことです。プロオケでもそんな歴史を持っているオーケストラはめったにないので、それは尊敬できる一面だと思います。オーケストラが上手くなっていくのは、ものすごく長い時間が必要なんです。どんなに上手い人をかき集めても10年20年で良いオーケストラは絶対できません。伝統もそうですし、譜面の一枚一枚の書き込みとかシミとかそういうものが何十年って積み重なっていった結果が音に現れているわけです。君達はその100年の歴史の上の更に先に行ける、っていう喜びとその重圧を背負わなきゃいけないっていう苦しみの両方があると思いますが。

 

―――過去に4回指揮して頂いたのですが、何か印象的なエピソードとか覚えていらっしゃいますか?

初めて指揮を振ったのは、ラフマニノフ交響曲第2番を演奏した160期でしたね。練習が始まったらやっぱり気が合うんですよ。こちらも楽しくなっちゃって、そうするとまたこれに応えてくれるっていうキャッチボールが良くて、いいじゃんこのオケ、と思ったのが20年前です。そうこうするうちに、ボックスが火事になって過去の貴重な資料の多くが焼けてしまったという話を聞きました。皆すごい落ち込んでいたのですが、逆にそれをバネにして良い演奏しよう、ということで160期の客演の時は非常に盛り上がりましたね。もう演奏会が出来なくなるのではないか、という状況の中から、頑張ろうよという泥臭い人間が出てくるのがこのオケの良い所だと思います。

大人になると本当にすぐ時が経っていくんです。正月にはニューイヤーコンサート。夏にはサマーコンサート。冬には第九演の演奏会。こういうパターンができると、なんか昨日ニューイヤーコンサートだったのが今日第九、みたいにすぐ一年が終わっていってしまいます。そういう中で、たまに(京大オケの客演に)来て指揮を振ると、プロで過ごしている日常と、やっぱりちょっと違う空間や時間を思い出せるので楽しいですね。

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―――プロとアマチュアは技術も違いますし、掛けている時間も違うとは思うんですが、円光寺先生から見てどういった違いがあると思いますか。

アマチュアのオケは一から音楽を作っていきます。半年かけて本番までたどり着く。プロには時間はないので、個々人の技術を合体させる練習しかしないことが多いです。だからプロはもう結果が大事。でもアマチュアの皆にとっては経過がすごく大事。結果はもちろん本番がうまくいくことは素晴らしいことなのですが、そこにもっていくまで、例えば今日の練習、これがやっぱり宝物だと思うわけです。一人ひとりの音楽を、技術を磨く、その時間があることが大事なのだと思います。だからこそ、ひと時ひと時を無駄にしないように、吸収してほしい、伸びて欲しいわけですよね。そう思って接すると、ちゃんとそれに応えてくれるので、今までの京大は。振っている方も、教え甲斐があるなって思います。みんな最初は好きで音楽をやっているわけですよ。仕事として音楽をしていると、いつしかその気持ちを忘れちゃう。私はそれを京大オケで思い出しに来ているわけですよ(笑)。

 

―――最後に100周年の記念演奏会に対して。団員へ円光寺先生から何かメッセージを頂けたら、お願いします。

100周年という大きな節目の演奏会に呼んで頂いて、とても光栄に思います。この演奏会を成功させるために、一緒に頑張っていきたい。誰かが頑張るというのではなく、全員で頑張っていきましょう。

 

――お忙しい中インタビューを引き受けて下さいましてありがとうございました。

 

編集後記

円光寺先生の京大オケに対する熱い思いを垣間見ることが出来て、ますます演奏会への期待が高まるインタビューでした。京大オケは今年で100周年を迎えます。100年の歴史が積み重なった音楽を是非ホールでお楽しみ下さい。