『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲


『ウィンザーの陽気な女房たち』の作曲者であるオットー・ニコライ(Carl Otto Ehrenfried Nicolai,1810-1849)は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の前身であるフィルハーモニー・アカデミーを設立したことでも知られているプロイセン(現在のドイツ)の音楽家です。

『ウィンザーの陽気な女房たち』はW.シェイクスピアの同名の喜劇に基づく三幕のオペラです。音楽の組み立てにおいては「劇的なドイツ的要素」と「装飾が多く軽快なイタリア的要素」とが効果的なバランスをとっていて、ドイツのオペラ界では一時、同じ原作を用いたヴェルディの「ファルスタッフ」を凌ぐ人気がありました。

舞台はイングランドの地方都市ウィンザー。太った老勲爵士のファルスタッフは経済的に困窮していました。そこで彼はウィンザーの名士であるフルート夫人とライヒ夫人の二人を籠絡して二人から援助を受けることで苦難から脱出しようと考えます。手始めに二人の夫人に恋文を送ったファルスタッフですが、同文の手紙を送っていたことが夫人たちにばれてしまいます。腹を立てた夫人たちは図々しいファルスタッフへの復讐を企てました。
夫人たちの計画と並行して、別の恋物語が進みます。ライヒ夫人は娘のアンナを地主貴族のシュペールリヒと結婚させたいと言います。しかしシュペールリヒだけではなく、医師のカイウス先生と青年フェントンもアンナと結婚したがっていました。フェントンはアンナとの結婚をしきりに懇願しますが、無駄に終わります。ところが実際は、当のアンナはシュペールリヒではなくフェントンのことを好いていたのでした。
夫人たちはファルスタッフを洗濯籠の中に隠れさせて、川に投げ込むという計画を成功させます。しかし、ファルスタッフはめげずに夫人たちの誘惑を続けるのでした。
一方、夜のライヒ家の庭ではアンナがよく庭を散歩する時間を見計らってシュペールリヒが現れますが、カイウス先生が来たため身を隠します。そしてその後フェントンの足音を聞いたカイウス先生も身を隠します。そこにアンナが現れ、フェントンと愛を誓い合ったのでした。それを影で見ていたシュペールリヒとカイウス先生は激しい怒りを抱きます。
フルート夫人とライヒ夫人は夫たちに状況を説明すると、みなでファルスタッフが忘れられないような懲らしめ方をしようということになります。また、アンナは母にはカイウス先生と、父にはシュペールリヒと結婚するように手配したと言われます。しかし彼女は両親の意に反して、フェントンと結婚すると強く決意します。
夫人たちの計画に苦しめられたファルスタッフは、自分のしたことを認め謝罪します。そしてアンナは両親にフェントンとの結婚を受け入れさせて、物語は大団円に終わります。

ニコライ作曲、歌劇『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲は、題名の示すように陽気で、明るく軽快な旋律に満ちた作品で、このオペラ全体の雰囲気を感じられます。ぜひ、私たちの演奏で味わってみてください。

・参考資料
新グローブ オペラ事典
(スタンリー・セイデン編 中矢一義/日本語版監修 白水社2006)

オックスフォード オペラ大事典
(編著者ジョン・ウォラック、ユアン・ウエスト 監訳者大崎滋生、西原稔 平凡社1996)

『ニコライ 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲』(溝部国光著 日本楽譜出版社)より 解説