詩曲 Op.25


エルネスト・ショーソン(Ernest Chausson, 1855-1899)は、フランスで生まれ、フランスで没した人でした。彼は内向的な性格だったものの、「神から命じられた仕事を果たすことなく死ぬのが恐ろしい」という言葉を残しており、彼が強い信念を持って作曲活動に取り組んでいた人物であることがわかります。

1855年1月、ショーソンはパリで産声を上げました。彼は恵まれた家庭環境で不自由のない生活を送りました。体が弱かったこともあり、彼は一人の家庭教師に見てもらうことになりました。ショーソンは家庭教師に文学、美術、そして音楽を教わり、芸術に秀でた人間となったのです。15歳になるころには、パリのさまざまなサロンで年長の人々と接することで音楽の教養を深めていきました。
ショーソンは音楽家の道に進むと決意しましたが、両親に激しく反対されてしまいます。しかし彼が法律学校に進学し、優秀な成績で卒業すると、ついに音楽に打ち込むことを許されました。音楽家としての人生は比較的短いものの、歌曲や交響曲、ピアノ四重奏曲など、様々なジャンルの曲を発表しました。

今回当団が演奏する「詩曲」は1896年、ロシアの作家ツルゲーネフの小説である「恋の賛歌」から強く影響を受けて作曲されました。この小説は、若き画家と音楽家がひとりの美しい女性に情熱的な恋をする物語です。ショーソンは推敲を重ね、最終的には「詩曲」から「恋の賛歌」の物語性を取り除きました。それでも、小説で登場する東洋の魔術のイメージや、情緒豊かで切なく激しい恋愛の様子は「詩曲」にしっかりと反映されています。

「詩曲」は、構成上大きく5つに分けることができます。
第一部は、オーケストラによる厳かな序奏です。その後無伴奏で現れるソロヴァイオリンの夢見心地な第一主題は、和音を伴い、弦セクションによって繰り返されます。再登場したソロヴァイオリンは、トリルや重音[1]といった演奏技法によって先ほどよりも高まった感情を訴えかけます。
第二部は、緊張感と推進力のある曲調で、魔術的な雰囲気が垣間見えます。ここで登場する、少し切なくも感情豊かな第二主題は、この第二部以降あらゆる楽器によって歌い上げられます。ヴィオラソロとオーボエという珍しい組み合わせも登場しますので、ぜひご注目ください。
第三部は、駆け上がるソロヴァイオリンの旋律に導かれ、第二主題が先ほどとは全く異なった激しい曲調で演奏されます。各楽器が感情をあらわにする様子が聴きどころです。
第四部は、一層神秘的で悲劇的になった導入部の旋律のあと、第一主題と第二主題が音の厚みを増しながら反復されます。暖かさと荒々しさの間で揺れ動きながら曲が進んでいきます。
第五部では、不穏な空気が少しずつ解きほぐされながらも、完全には消えません。それでいて最後は、やわらかな光があたりに広がるように幕を閉じます。

「詩曲」はひとつの小説から出発し、推敲を経て純粋な協奏曲の高みへと登りつめました。緻密に計算された構成と、情緒豊かでのびやかな表現の調和をお楽しみください。

参考文献

  • ジャン・ガロワ著 西村六郎訳 『ショーソン』 1974年 音楽之友社
  • 佐々木茂生解説 『Ernest Chausson 詩曲』 2017年 日本楽譜出版社
文:澤野(Va.)

用語解説

[1] : 重音

単音楽器(主として同時にひとつの音だけを演奏する楽器)において、複数の音を同時に発生させる演奏技法。