ソリスト 澤和樹先生インタビュー


① ショーソン「詩曲」について

澤先生:フランスのジネット・ヌヴーという女性のヴァイオリニストがいて、残念ながら飛行機事故により30歳の若さで亡くなってしまいましたが、わずかながら録音が残っています。歴史的名演と言われるショーソンの「詩曲」も、元々SPだったのをLPレコードに直したのを探し出して聴きましたが、当時、高校生だった私にとっても非常に衝撃的でしたね。フランス系の音楽ではあるけれども、すごく心に直接訴えかけるヌヴーの演奏もそうですが、すごく憧れを感じた曲でした。その後、大学2年の日本音楽コンクールに出場した時の予選の課題曲だったこともあって、かなり深く勉強した曲ですし、外国の国際コンクールを受けた時も、自由曲の一つとして持っていったり、1976年に、21歳で故郷の和歌山と大阪でのデビューリサイタルでも、ショーソンの「詩曲」はプログラムに加えていました。そういう意味で若い頃から思い入れのある曲ですね。一方で、これまでオーケストラ伴奏で演奏した事はありませんでしたので今回の京大オケとが初共演です。

② ショーソン「詩曲」の解釈について

学指揮:ありがとうございました。音楽的なことになるのですが、ショーソンは音源などを聴いて、色々な解釈があるなあと思います。物語が元々になった詩というのがあって、そのタイトルをそのままつけずに「詩曲」というだけにしているのもあって、結末が最後どうなってしまうのだろうとかそういう解釈が人によって異なるんじゃないかなと思っているのですが、そこに関してはどういう風に思っていますか?

澤先生:そうですね、「詩曲」というのはいわゆる標題音楽ではなくて、作曲者としては絶対音楽として捉えてもらいたかったんだろうと思うんですよ。元々詩でインスピレーションを受けたけれども、それに限定されるよりは、聴く人、あるいは演奏する人の独自のイメージっていうのを作ってもらった方がいいと思うんですけれども。

③  ショーソンと幻想交響曲の組み合わせについて

学指揮:幻想だったらショーソンがいいと思いますよと先生がおっしゃったと思うんですが、そういうところの関連性はどうなんでしょうか?

澤先生:自分自身の、好みというかテイストでそう思っているだけかもしれませんが、ベルリオーズの、それこそ名前の通りすごくファンタジックな感じというのはショーソンの「詩曲」とすごく高め合うものだと思いますし、一方で、ショーソンはすごくワーグナーの影響を受けていて、トリスタン和声とよく言われていますね。「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲なんて特に、あっこれショーソンのポエムと一緒だっていうところが何箇所も出てきて、関連を思うのもなかなか楽しいことだと思いますよ。
あとは、私は若い頃、結構ヴァイオリニストのイザイ(ウジェーヌ・イザイ)に傾倒していた時期があって、大学院の修士論文でイザイの無伴奏ソナタをテーマにしましたし、その直前にパリのロン=ティボー国際コンクールでイザイ・メダルという賞を頂いたんです。自分が若い頃ってイザイの音源を見つけるのがなかなか大変だったんですが、自分の感性にすごく合っているなあという風に思っていて、イザイの曲、あるいは本当に少ないけれどイザイの実演の音源などを聴くと、やっぱりショーソンのポエムがイザイの演奏を想定して書かれているということを思うものがあります。なにか本質的に自分が求めている音楽とイザイの音楽、あるいはショーソンの音楽に結びつくものを感じて、それが特に若い頃にショーソンのポエムをいろんな場面で弾きたいと思った理由にもなっているのかも知れません。
ショーソンには、ヴァイオリンとピアノと弦楽四重奏のための協奏曲という、これもなかなかの大曲があって、私の妻がピアニスト(蓼沼恵美子)で、イギリスの湖水地方音楽祭で弦楽四重奏団と一緒にその曲をやったことがあります。ただピアノパートがとんでもなく難しいらしくて。ヴァイオリンパートはなかなか美味しいところがあって私は楽しんでましたけど、妻は二度とやりたくないと言ってます(笑)
僕はもう一回やりたいな・・と(笑)

④ 田中祐子先生との共演について

澤先生:今回田中祐子さんとの共演もすごく楽しみにしています。今や超売れっ子になってしまって・・・。
彼女が東京藝大の大学院に入ってきたときはちょうど藝大指揮科の常勤の先生が定年で辞められたあと指揮科主任がしばらく空席だったんです。それで、私が当時の学部長から頼まれて指揮科の主任を一時期やっていたことがありました。だから何年間かはそういう立場で指揮科に関わっていたのですが、田中さんはその最初の頃に大学院に入ってきた1人でした。そこで初めて新入生の彼女と会った時に、小柄だけど凄く輝いていたんですよね、彼女は。それで、「あ、こういう人が卒業修了して行く時に藝大指揮科に来てよかったと思ってもらえるような指揮科にしないといけないな」という決意を新たにしました。だから、他にも学生いたはずなんだけど、なぜか田中祐子さんが・・・(笑) まあ女性指揮者がすごく珍しいこともあったけれども、大学院の間にやっぱり素晴らしい力を発揮して、修了試験は本当に指揮科で最高点が出るということは珍しいことですが、とても立派な成績で修了しました。まだまだ女性にオーケストラの指揮はできないと言われていた時代に、わずかこの数年でその考えを変えさせてしまった人の1人ですよね。オーケストラ、特にプロのオーケストラを相手にして、みんなをリードして行くだけの音楽性とカリスマ性、あとは話術も含めて雰囲気も自分の空間にしてしまう力があるというか。近々、フランスにボルドーの歌劇場を拠点にしてまた修行をされるみたいだし。

総務:来年の3月ぐらいから向かわれると聞きました。

澤先生:本当にタイムリーだったんですね、今回あなた方は。いろんな意味で楽しみですよ。

文:204期HP広報部