ベートーヴェン
『アテネの廃墟』序曲


2000年の眠りから目覚めた知恵の女神ミネルヴァが目にしたのは、 愛するアテネの変わり果てた姿だった―――
 

「アテネの廃墟」は、当時の人気詩人コツェブーによる同名の劇の付随音 楽として作曲されました。この曲は序曲と8つの小曲から成りますが、今 回演奏する序曲は「トルコ行進曲」と並んで今日でも親しまれ、演奏会で もしばしば扱われる作品です。

この劇は、2000年の眠りから目覚めたミネルヴァが、トルコの支配によ り荒れ果ててしまったアテネの惨状を目の当たりにする場面で幕を開けます。序曲の冒頭も、そんなアテネの情景を描くような、スタッカートが印象的でどこか不 気味な序奏から始まります。続く弦楽器のメロディは、男女の奴隷による哀愁に満ちた二重唱です。

その後ミネルヴァは、他の神々たちがペストに逃れたこと、そこでは芸術が花開き、新し い劇場も落成されたということを知らされます。舞台はペストに移り、人間たちは芸術を 奨励するハンガリー王を賞賛し、そこに現れたミネルヴァは王の胸像に月桂樹の冠を授け ます。序曲もまた、オーボエの朗らかなソロにより雰囲気が一変し、続いて軽快で力強い 行進曲風の主旋律が奏でられます。中間部では弦楽器のピッツィカートにのってオーボエ とファゴットが静かに掛け合い、後半は主旋律が再現され、短いコーダを経て華やかに曲 を閉じます。