リムスキー=コルサコフ
交響組曲『シェヘラザード』


今回の定期演奏会のメインを飾るのは、ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフによる交響組曲『シェヘラザード』です。シェヘラザードとは『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』の中に出てくる女性です。それではまず簡単に『千夜一夜物語』を紹介しましょう。

千夜一夜物語

シャリアール王は妃に不貞を働かれたことからひどく女性不信に陥ってしまい、若い娘を次々と妃に迎えては一夜を過ごした後に首を斬っていました。大臣の娘で賢いシェヘラザードは娘たちの命を救うため自ら進んで妃となり、毎夜シャリアール王に冒険や恋の物語を語って聞かせます。話の続きが聞きたいがためにシャリアール王はシェヘラザードを殺すのを一日一日と延ばし、一千一夜ののちには王はすっかり改心したのでした。

リムスキー=コルサコフはこの中からいくつかの話を自由に組み合わせて4楽章からなるオーケストラ曲に仕上げました。各楽章には聴き手のイマジネーションをふくらませるために表題がつけられています。全曲通して45分ほどの聴き応えのある大曲です。

第1楽章 海とシンドバッドの船

七つの航海を経て大金持ちになった船乗りシンドバッドの物語を描いたものです。曲は威圧的にシャリアール王が登場するところから始まります。やがてシェヘラザードが語り出し、聴き手をシンドバッドの物語の世界へと誘います。大海原に波のうねる様子の合間に、シャリアール王のテーマが何度も繰り返し登場します。

第2楽章 カランダール王子の物語

修行僧や王子が諸国を行脚して修行を積む話をいくつか合わせて描いたものと言われています。シェヘラザードの語りに始まり、カランダール王子のテーマが軽やかに演奏されます。途中にはシャリアール王が激しく叱責するかのような音楽が現れます。カランダール王子のテーマは静かになったり激しくなったりを繰り返しながら、最後は盛り上がりを見せて終わります。

第3楽章 若い王子と王女

お互い遠く離れたところに住むアラビアの王子と王女が夢の中で恋に落ち、数々の試練ののちに結ばれる物語です。それまでとは打って変わった甘い官能的な若い王子のテーマのあと、それと少し似た、しかしもっと軽やかな若い王女のテーマが現れます。再びシェヘラザードが登場して曲は一旦盛り上がったあと、うねりながら徐々に静かになっていきます。

第4楽章 バグダッドの祭―海―船は青銅の騎士のある岩で難破―終曲

バグダッドのエキゾチックで活気あふれる祭の様子や、近くを通る船を引き寄せて難破させてしまう岩の話などが断片的に描かれます。冒頭のシャリアール王のテーマはここでは話の続きをせかすような切迫した調子になり、シェヘラザードの語りも激しくなっています。それまでの楽章のメロディが形を変えながら目まぐるしく入れ替わり、熱狂的なバグダッドの祭の喧騒を表します。1楽章では穏やかだった海はここでは嵐となって船に襲い掛かり、ついに船は難破してしまいます。物語が終わって、すっかり穏やかとなったシャリアール王とシェヘラザードの語り合う姿が描かれ、曲は静かに幕を閉じます。