C.ニールセン
 交響曲第2番ロ短調『四つの気質』


193_00_003_Nielsen

この曲は、1901年から1902年11月にかけて、デンマークの作曲家カール・ニールセンによって作曲されました。副題の「四つの気質」とは、古代ギリシアの医師ヒポクラテスが唱えた四体液説に基づいて分類された人間の気質を指します。ヒポクラテスは人間の気質を、短気で怒りっぽい胆汁質、冷静・知的な粘液質、陰気でメランコリックな憂鬱質、陽気で活発な多血質に分類しました。ニールセンは居酒屋で、この四体液説をモチーフにした絵を目にし、そこに描かれている人間の気質に興味を持ちました。そして、この曲のそれぞれの楽章を、これら四つの気質になぞらえて作曲したのです。それでは、気質と音楽を重ね合わせながら、各楽章を順に見ていきましょう。

第1楽章 アレグロ・コレリーコ(胆汁質)
胆汁質の性格には、愛憎激しく怒りっぽいという特徴があります。それを表すような激しい和音から始まり、怒ったような第一主題が提示されます。これに対して第二主題はゆったりと穏やかに歌われますが、転調を繰り返し、気分が変わりやすい性格を暗示しています。歌謡的な主題を経て、攻撃的な2音のモチーフが重なり、曲が展開していきます。再び第一主題が現れ、途中でコーダが始まり、叩きつけるような和音で幕を閉じます。激しくもロマンティックな曲想です。

第2楽章 アレグロ・コーモド・エ・フレマティコ(粘液質)
この楽章は穏やかで落ち着いた、知的な曲想です。粘液質の特徴である、滅多にやる気を起こさないけれども、思考力があり冷静という気質が表現されています。歌うようなワルツに始まり、そよ風の中をたゆたうように曲は進みます。とりとめもない伴奏の上に主題が乗り、最後もとりとめもなく終わります。

第3楽章 アンダンテ・マリンコーリコ(憂鬱質)
大きく沈んだ憂鬱な曲想が続きます。憂鬱質の人の性格は、独創性豊かですが、懐疑的で固定観念にとらわれがち、非社交的で孤独であるといわれています。各楽器の低音域を重ねた和音の響きが、憂鬱さを醸し出します。短調と長調とを浮遊する様子が、さらにメランコリックな気分を強調していますが、第4楽章に向けて、劇的で起伏に富んだ音楽になっていきます。

第4楽章 アレグロ・サングイネオ(多血質)
多血質の特徴は、気分に左右されることも多いですが、明るくユーモアがあり、感じがよく優しいという性格です。この楽章は第3楽章とは対照的に、楽しい曲想で進んでいきます。ティンパニの合図で飛び跳ねるような主題が始まり、とても活気に満ちています。平和で穏やかな中間部をはさみ、再び飛び跳ねるような曲想に移り、熱烈なクライマックスに至ります。 ニールセンはこの楽章のイメージを次のように書いています。「私はこの楽章で、全世界が自分のものだと思い、何もしなくても幸福が舞い込んでくると信じて、何も考えずに突き進む男を描こうとした。時には彼が脅え、荒っぽいシンコペーションで息を呑むこともある。しかしそんなことはすぐに忘れ去り、またいつもの彼に戻る。たとえ、音楽が短調になっても、彼の陽気なうわべだけの性格ははっきりとわかるのである。」