E.グリーグ 『ペール・ギュント』より
語りつき(語り:川下大洋 協力:劇団そとばこまち)


193_00_002_PeerGynt 『ペール・ギュント』とは、イプセンが書いた戯曲『ペール・ギュント』のためにグリーグが作曲した劇付随音楽です。管弦楽のために第一組曲、第二組曲が本人により編曲されています。その中でも特に『朝の気分』、『山の魔王の宮殿にて』は聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。今回の定期演奏会では、第一組曲、第二組曲、第一幕への前奏曲、ソルヴェイグの子守唄を、劇で演奏される順番通りにオリジナルの脚本による語りつきで演奏します。

あらすじ

主人公であるペール・ギュントは、夢見がちで怠惰な性格。落ちぶれた豪農の息子であり、母オーセと二人で暮らしていました。街ではかつて彼の恋人であったイングリットの結婚式が行われており、婚礼の場に突如現れたペールは彼女を奪って逃げ去ります。しかしすぐに飽きてしまった彼は、彼女を棄てて放浪の旅に出るのでした。旅の最中、山の魔王の娘と結婚させられそうになるペールでしたが、命からがら逃れ、心清らかな女性ソルヴェイグと穏やかに暮らします。しかし、その暮らしは長くは続きませんでした。ペールはソルヴェイグに「近くても遠くても、――待つんだよ」と言い残し故郷へ戻ります。帰郷したペールは母オーセの元を尋ねますが、彼女は臨終の間近でした。母の死を看取った後、ペールは富を築きながら様々な冒険を重ねます。しかし、美しい踊り子アニトラに裏切られ全財産を失うなど、彼の冒険は決して穏やかとは言えないものでした。遍歴を重ね年老いたペールは、人生の最後を故郷で過ごそうと海路帰国の途に着きます。その途中でペールは、すっかり年老い盲目になったソルヴェイグと再会します。なんと彼女は白髪になるまでずっと彼を待ち続けていたのでした。「あなたは私の一生を美しい歌にしたわ」と言う彼女に心を打たれ、今までの自分の所業を悔いるペール。そんな彼をソルヴェイグはそっと膝に抱き、子守唄を歌います。深い愛情によって全てを赦されたペールは、彼女の美しい歌声を聴きながらゆっくりと息を引き取り、物語は幕を閉じます。

曲目

『序曲――婚礼の場で』
物語の幕開けを華々しく飾る軽快なメロディーが特徴的な一曲で、イングリットの婚礼の場面を表しています。煌びやかな雰囲気の後には『ソルヴェイグの歌』の旋律がゆるやかに奏でられます。

『花嫁の略奪――イングリットの嘆き』
花嫁の略奪に対する客人の怒りが激情的に表され、中間部では略奪され棄てられたイングリットの嘆きの歌が広がっていきます。切々とした嘆きから次第に感情が露になり、イングリッドの激しく揺れ動く心情が描かれています。

『山の魔王の宮殿にて』
特徴的な主題が繰り返されながら、しだいに音量が増大して甲高い不気味な音楽へと変化していきます。おどろおどろしい雰囲気から、魔物たちがペールを迫害していく様子が臨場感たっぷりに描かれます。

『オーセの死』
母オーセの死を看取る場面を表しており、弦楽器によってゆったりと悲しい旋律が歌われます。愛する息子に見守られながら眠るオーセを描いたような、安らかな和音が静かに響いて曲が終わります。

『朝の気分』
ペールがモロッコで朝を迎えながら、新しい人生を歩む決意を固める場面です。日の出を表す朝の清々しい様子がフルートによって奏でられ、森のざわめきが情感豊かに表されています。

『アラビアの踊り』
頻繁に現れる賑やかな旋律がペールをもてなす踊り子たちを表し、中間部のとりわけ美しい旋律がアニトラの求愛を描いています。他の曲たちと一風変わった東洋的な雰囲気が特徴の一曲です。

『アニトラの踊り』
『アラビアの踊り』と対をなす一曲です。扇情的な踊りでペールを誘惑するアニトラの様子が、弦楽器の旋律に乗せて官能的に描かれています。

『ソルヴェイグの歌』
ペールを待ちわびるソルヴェイグの心情を表した歌です。ペールの言葉を信じてじっと待ち続ける彼女の健気な想いが、どこか物悲しい旋律によってゆったりと表現されています。

『ペール・ギュントの帰郷――嵐の海の夕べ』
荒れ狂う海の様子が緊張感をもって表されています。冒頭に現れる2つのモチーフを中心に曲が広がり、船の難破した様子が表情豊かに切迫したテンポでもって描かれています。

『ソルヴェイグの子守唄』
この物語の終わりを告げる曲です。深い愛情でペールを包み込むように、ソルヴェイグの赦しが木管楽器のソロによって伸びやかに歌われます。賛美歌を思わせる清らかな旋律はペールを天上の世界へ誘うようでもあります。