S.ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第3番 ニ短調


ラフマニノフ

 この曲は、1900年代の初頭、『ピアノ協奏曲第二番』の成功から数年が経ち、ラフマニノフが優れたピアノ奏者として認められた始めた頃に作曲された、彼の三番目のピアノ協奏曲です。後に彼がロシア革命により混乱する祖国を逃れ移り住むことになる、アメリカへの演奏旅行のために作曲されたと言われています。1909年にピアノソロをラフマニノフ本人の手によって、ウォルター・ダムロッシュ指揮のニューヨーク交響楽団と初演、直後1910年にマーラー指揮のニューヨーク・フィルハーモニーとともに再演が行われました。『ピアノ協奏曲第二番』と並ぶ彼の代表的な作品であるのみならず、ピアノ協奏曲というジャンルの中でも突出してすぐれた作品と言えるでしょう。
 ピアノソロ、オーケストラ両者ともに難曲として有名であり、特にピアノソロには高い技術が要請されます。当初、アメリカでのこの曲の人気は、一般的な他のピアノ協奏曲に比したその長さと技術的な困難さによっていまひとつでした。しかし、ホロヴィッツによる愛奏を端緒に、現在では多くのピアニストとオーケストラによって演奏されるようになりました。
 構成としては、概ね伝統的な協奏曲のもの、つまり「急-緩-急」の順で配置された三つの楽章という形式を踏襲しています。ニ短調の第一楽章は自由なソナタ形式の楽章です。導入の短いフレーズが置かれた後、ピアノによって抒情的な主題が提示されます。音程が跳躍せず、狭い音域で歌われるこれは、この協奏曲全体を貫く旋律となり、さまざまな活用を見せることになります。またこの第一楽章は、難易度の高い特徴的なピアノのカデンツァを含むことで夙に有名です。イ長調の第二楽章は、間奏曲Intermezzoと呼ばれる三部形式の緩徐楽章です。協奏曲全体のなかで十分な長さを与えられていますが、間奏曲の名にはこの楽章がより即興的な、変奏曲の要素を取り入れて作曲されているという意味合いもあります。第二楽章と切れ目なく演奏されるニ短調の第三楽章は、ソナタ形式で書かれています。それまでのどの楽章とも異なり力強く決然とした展開を見せ、賑やかで軍楽的な終止でこの曲を閉じます。これは『ピアノ協奏曲第二番』でも見られる手法です。
 ピアノの華麗な名人芸とともに、スラヴ的とも言えるほの暗い甘美な情念を感じさせる点で、この曲は『ピアノ協奏曲第二番』と同じ線の上にある作品だと言えるかもしれません。しかし、ラフマニノフ特有の和音進行や哀愁あふれるメロディーは『第二番』よりも洗練され進化しています。是非、オーケストラとピアノが奏でるその深い魅力をお楽しみください。

文:195期HP広報部