F.シューベルト
劇音楽『ロザムンデ』序曲


シューベルト

 ウィーンの郊外で生まれたシューベルトは、劇音楽の世界に大きな憧れを抱き、5つのオペラをはじめ、オペレッタ、戯曲のための音楽など未完成品も含めて全部で18の作品を書きました。しかし、それらの上映はほとんど顧みられることはありませんでした。
 『ロザムンデ』の音楽は、ベルリン出身のヘルミーナ・フォン・シェジーという女流作家の書いた四幕物の戯曲『キプロスの女王ロザムンデ』に附曲したもので、1823年9月に作曲されました。そして、同年12月20日にウィーンのアン・デア・ウィーン劇場で初演されました。
彼女は前作の失敗を受けて、その名誉挽回のために急遽新作を上演することにし、速筆に定評のあるシューベルトに音楽を依頼しました。しかし、その『ロザムンデ』も翌日再演されただけで上演が打ち切られてしまったほど、できの悪いものでした。戯曲が駄作であったと不評を受けて、劇そのものは今日散逸していますが、この劇に付随する音楽だけは美しいと当時から評判で、初演が終了した際に作曲者が舞台に呼ばれるほどのものでした。シューベルトは『ロザムンデ』が失敗に終わってしまったために、楽譜を放置したままにしていましたが、その40年後にシューマンによって発見され、今では様々な場所で演奏されるようになりました。  実は『ロザムンデ』の初演の際に使用された序曲は、シューベルトが別の作品『アルフォンゾとエストレルラ』のために作曲した序曲を転用したものでした。作曲者自身が以前作った曲をさらに別の作品でも使用することは、イタリアの歌劇においてはしばしば行われていたことであり、ロッシーニの『セビリアの理髪師序曲』は、その典型的な例です。
現在『ロザムンデ序曲』と呼ばれる楽曲は二つあります。『魔法の竪琴序曲』を転用したものと、『アルフォンゾとエストレルラ序曲』を転用したものです。二つの序曲とも『ロザムンデ序曲』と呼ばれていますが、現在では『魔法の竪琴』が『ロザムンデ序曲』として演奏されることが一般的になっています。今回の演奏会で取り上げる曲も『魔法の竪琴序曲』の転用です。
 この曲はハ短調の重々しいユニゾンから始まります。主題はヴァイオリンが奏でる軽快な第一主題、クラリネットとファゴットを筆頭に様々な楽器が伸びやかに歌う第二主題、スタッカートを多く用いたリズミカルな第三主題の3種類あります。重々しく荘厳な序奏から幕を開け、その後ハ長調に転調し、様々な表情を持つ主題へ移り変わりながら曲は進んでいきます。約10分間の短い曲中で次々と移り変わる曲調の変化に注目しながら、『ロザムンデ序曲』をお楽しみください。

文:195期HP広報部